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有田・bowl



多くの焼き物屋が軒を連ねる有田駅近く、皿山通り沿いにあるのが生活道具のセレクトショップ「bowl」です。長崎県波佐見町のすぐ隣です。

もともとは、陶磁器の商家だった堅牢な家屋はおよそ築100年。リノベーションを施した建物は1階部分が店となり、2階にはbowl発足に携わった株式会社有田まちづくり公社が事務所を構えています。

かつて日本各地やヨーロッパに人気を誇った世界的な陶磁器の産地も賑わいを無くし、空き家も目立つようになりました。そんな町に陶磁器以外の物事を展開することで、町に再びにぎわいが戻るきっかけの“呼び水”となるように、との要請を受けて作ったのが「bowl」です。



町を歩くとたくさんのレンガ造りの煙突が目に入り、窯元の多さを実感します。有田町の特徴は、作り手だけではなく、それを販売する「卸」を手掛ける商社も多数存在することです。

卸団地「Arita Sera」は陶磁器の問屋が20以上軒を連ね、ゴールデンウィークに開催される陶器市が行われる古い商店街にも焼き物を売る店はたくさんあります。


有田の始まりは、陶磁器の素材の陶石が採れたこと。石を砕くための水車小屋があったことを今に伝える美しい川が残り、作陶のための絵の具屋や生地屋、包装資材屋もあり、作って売って運んで届けるところまで、すべてがこの町の中で賄われ続けています。



日本料亭などで使われる「割烹食器」生産の町だけあって、自然と口が肥えた町民性のように思います。多くの田舎町にはすっかり少なくなった鮮度勝負の魚屋や八百屋、料理とのペアリングが売りの酒屋やフランスで修業されたマダムが作るフレッシュなケーキ屋などの個人商店は活気があり、時には行列していることすらあります。


観光客向けの華やかで今風の施設はありませんが、その代わりに息の長い食事処が多く、美味しいことはもちろん、しかしあえて人目につきづらくしていることも特徴に感じます。

「焼き物を媒介する食通でもある地方の取引先をもてなすための交流の場」としての役割を担っている印象です。ですから必然的におしなべて渋く大人嗜好なのですが。



表通りだけを見ていると、歩く人もまばらな殺風景な街並みで少し寂しい気持ちになりますが、一歩裏通りに入ると江戸時代の風情が残る路地の探索も面白く、地元の人が通う飲食店には陶磁器と同じ職人気質の本気があります。

決してオープンではない、ちょっと変わった町の魅力はここでは語り尽くせません。

窯業を中心とした町の生態系にお邪魔するような気分で町を散策してみてください。



カジュアルな日常着のような波佐見焼に比べ、有田焼はハレの日に使うドレスのような、フォーマルなイメージが有田焼にはあります。

店を営むにあたっては有田焼をドレスダウンさせて伝えられないかと考えました。


めでたい吉祥文様が描かれ、華やかな色味が特徴的といえる有田焼。400年の昔、はじめて有田焼が食卓に並んだときには、当時の人々にどのように受け入れられたのだろうと、考えを巡らせます。

磁器が生産される以前の日本の食卓は、ざらっとした茶色の陶器が器の中心だったはず。

水がしみ込まず清潔で丈夫な、美しい絵柄が施された白い器が食卓に並んだとき、当時の人々は『なんて贅沢なのだろう』と思ったのではないかと。


贅沢を感じる物事は、お金で買えるとは限りません。有形無形さまざまに表現される〝贅沢〟という有田焼の価値観は、bowlでは数々の生活用品を通して表現したいと思っております。



「bowl」という店名は“うつわ”という意味です。食器生産の町なので「器」。

もう一つは「どんなものでも受け入れる形を限定しない器の大きな人」のような店になれたらという思いからネーミングしました。店側が提案する物質を販売するだけでなく、イベント開催を通して、緩やかに店を開放し、色んな人たちに自由に使ってもらえたらうれしいと思っています。


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